2004年05月16日
昨日、ある打合せで「マズローの欲求階層説」を説明しようとして、自分の理解がうろ覚えなことが判明 (^^;)。その場でWebで検索してもいまいちぴったりくるものがなかったので、結局説明はうやむやのまま…。ちょっと悲しかったので外部記憶としてここにエントリしておく。
*出典は、『完全なる経営』/A.H.マズロー。おもに巻末の監訳者(=金井壽宏さん)解説から。
まずは背景となる用語の解説から。
●完全なる経営(ユーサイキアン・マネジメント Eupsychian Management)
---
完全なる人間、完全なる社会を探求してきたマズローは、1962年の夏に会社という世界にふれ、完全なる経営(ユーサイキアン・マネジメント)という考えにたどり着く。本書で詳説されているとおり、ユーサイキアンとは、彼の造語で、自己実現人を生み出し、自己実現人が作り出していく文明、あるいは実現しうる理想郷を表す言葉である。精神的・心理的に健全な方向への前進、あるいは健全なマネジメントという意味の言葉でもある。
---
分かったような気もするのだけれど、「完全なる」という気張り方がちょっとひっかかる。「監訳者まえがき」の解説文もあげておこう。
---
ユーサイキア(eupsychia)という言葉は、本書の中でも何度も出てくるとおり、精神的に健康で、実現可能な理想郷(ないところという意味でのユートピアではなく)を指し示すマズローの新造語である。したがって、ユーサイキアン・マネジメントとは、「働く人々が精神的に健康でありえるためのマネジメント」という意味合いだ。
---
僕はこちらの説明の方がすんなり頭に入ってくる。
* * *
さて、ここからが本題。
●欲求階層説(need hierarchy theory)
p.419 には次の図がある。(キャプション:欲求階層説の教科書的な図示)
---
/\
/ \
自己実現の欲求
他者からの承認と自尊心の欲求
/ 所属と愛の欲求\
/ 安全の欲求 \
/ 生理的欲求 \
---
ちなみに、まえがきp.40(「アブラハム・マズロー - ひとと作品」)には、やや表現の違うこんな図が書かれている。
---
/\
/ \
自己実現の欲求
/尊敬への欲求\
/ 社会的欲求 \
/ 安全への欲求 \
/ 生理的欲求 \
---
よく書かれるこれら5階層のピラミッドだが、マズロー自身はこんな図は書いていないらしい。金井さんは「サケの滝登りのようなこんな図ではマズローの真意は伝わらない」と手厳しい。でも、そのあとで「とはいえ、欲求階層説に関するこのような紹介のされ方自体は、大きくは間違っていない──便利でさえある。」と書いているので、このエントリに書くのもよしとしよう(笑)。
で、重要なのは欲求階層説が次の4つの仮説によって成り立っていることを理解することなんだそうだ。(特に仮説3,4が一般に理解されていない、とのこと)
---
【仮説1】欲求は満たされると欲求ではなくなる。
(満たされない欲求によってひとは動機づけられる)
【仮説2】この階層上で、より低次(あるいはより基本的な)欲求が満たされて、
はじめてより高次の欲求が出現してくる
【仮説3】承認と自尊心の欲求に至るまでの欲求は、足らないものを満たすとい
う欠乏欲求(D欲求)であるのに対し、自己実現は一人ひとりの人間
のかけがえのない存在(being)そのものにかかわる欲求(B欲求)
である
【仮説4】D欲求は、生物的基礎が濃厚で、強い本能がそこに働いている。他方、
自己実現へのB欲求にも生物学的基礎がないわけではないが、それは
「弱い本能」に基づいているにすぎない。そのために、B欲求の充足
にかかわるB価値やB経験に接するためには、いい社会やユーサイキ
アン・マネジメントがいる
---
まだまだ完全に理解できたわけじゃないが、とりあえず他人に説明するときにはこのエントリで説明できそう。ひとまずこんなところでアップ。
▼『完全なる経営』を解説しているWebページ
・俺と100冊の成功本: 完全なる経営 A.H.マズロー
・FPN:『完全なる経営』-マズローの深き思索
・シンクタンクのメッ!: とりあえず読んだ日記2003
シンクタンクのメッ!: 安易に自己実現をもちだすのは思考停止
*出典は、『完全なる経営』/A.H.マズロー。おもに巻末の監訳者(=金井壽宏さん)解説から。
まずは背景となる用語の解説から。
●完全なる経営(ユーサイキアン・マネジメント Eupsychian Management)
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完全なる人間、完全なる社会を探求してきたマズローは、1962年の夏に会社という世界にふれ、完全なる経営(ユーサイキアン・マネジメント)という考えにたどり着く。本書で詳説されているとおり、ユーサイキアンとは、彼の造語で、自己実現人を生み出し、自己実現人が作り出していく文明、あるいは実現しうる理想郷を表す言葉である。精神的・心理的に健全な方向への前進、あるいは健全なマネジメントという意味の言葉でもある。
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分かったような気もするのだけれど、「完全なる」という気張り方がちょっとひっかかる。「監訳者まえがき」の解説文もあげておこう。
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ユーサイキア(eupsychia)という言葉は、本書の中でも何度も出てくるとおり、精神的に健康で、実現可能な理想郷(ないところという意味でのユートピアではなく)を指し示すマズローの新造語である。したがって、ユーサイキアン・マネジメントとは、「働く人々が精神的に健康でありえるためのマネジメント」という意味合いだ。
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僕はこちらの説明の方がすんなり頭に入ってくる。
* * *
さて、ここからが本題。
●欲求階層説(need hierarchy theory)
p.419 には次の図がある。(キャプション:欲求階層説の教科書的な図示)
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/\
/ \
自己実現の欲求
他者からの承認と自尊心の欲求
/ 所属と愛の欲求\
/ 安全の欲求 \
/ 生理的欲求 \
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ちなみに、まえがきp.40(「アブラハム・マズロー - ひとと作品」)には、やや表現の違うこんな図が書かれている。
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/\
/ \
自己実現の欲求
/尊敬への欲求\
/ 社会的欲求 \
/ 安全への欲求 \
/ 生理的欲求 \
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よく書かれるこれら5階層のピラミッドだが、マズロー自身はこんな図は書いていないらしい。金井さんは「サケの滝登りのようなこんな図ではマズローの真意は伝わらない」と手厳しい。でも、そのあとで「とはいえ、欲求階層説に関するこのような紹介のされ方自体は、大きくは間違っていない──便利でさえある。」と書いているので、このエントリに書くのもよしとしよう(笑)。
で、重要なのは欲求階層説が次の4つの仮説によって成り立っていることを理解することなんだそうだ。(特に仮説3,4が一般に理解されていない、とのこと)
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【仮説1】欲求は満たされると欲求ではなくなる。
(満たされない欲求によってひとは動機づけられる)
【仮説2】この階層上で、より低次(あるいはより基本的な)欲求が満たされて、
はじめてより高次の欲求が出現してくる
【仮説3】承認と自尊心の欲求に至るまでの欲求は、足らないものを満たすとい
う欠乏欲求(D欲求)であるのに対し、自己実現は一人ひとりの人間
のかけがえのない存在(being)そのものにかかわる欲求(B欲求)
である
【仮説4】D欲求は、生物的基礎が濃厚で、強い本能がそこに働いている。他方、
自己実現へのB欲求にも生物学的基礎がないわけではないが、それは
「弱い本能」に基づいているにすぎない。そのために、B欲求の充足
にかかわるB価値やB経験に接するためには、いい社会やユーサイキ
アン・マネジメントがいる
---
まだまだ完全に理解できたわけじゃないが、とりあえず他人に説明するときにはこのエントリで説明できそう。ひとまずこんなところでアップ。
▼『完全なる経営』を解説しているWebページ
・俺と100冊の成功本: 完全なる経営 A.H.マズロー
・FPN:『完全なる経営』-マズローの深き思索
・シンクタンクのメッ!: とりあえず読んだ日記2003
シンクタンクのメッ!: 安易に自己実現をもちだすのは思考停止
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1. [心理][本]『人間性の心理学』/A.H.マズロー (1) [ 【ヒト感!!】 ] 2006年08月23日 08:01
先週長旅にもっていった『人間性の心理学』。昨日、第16章までの本編について一通り読み終えた。 まだ付録A,B(これだけで70ページ強!)は途中だが、自らの頭を整理する意味もこめて少しずつまとめていこうと思う。そんなわけでエントリタイトルには(1)をつけた*1。 ま
2. マズロー理論の拡張~精神分析の日本化~ [ まぶい分析学 Mabui Analysis ] 2008年01月24日 11:00
2004年(平成16年)9月3日・日本人間性心理学会・於文教大学)
2008年(平成20年)1月24日(木) 旧ブログより加筆転載
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*本論文はまぶい分析学の基本となるもののひとつである*
わが国における心理学の理論と臨床は、理論的には西洋...
この記事へのコメント
1. Posted by 聖幸 2004年05月16日 21:28
「紹介していただきありがとうございます。」ども、いつもお世話になっています。聖幸です。リンクしていただきありがとうございます。しかし、マズローだと嬉し恥ずかしですねよく分かってないかも(^^;あと、私のメルマガでもこちらのブログを少し紹介させていただきました。事後承諾で勝手ながらすいません。これからもよろしくお願いします。
2. Posted by hiroc 2004年05月16日 23:22
「こちらこそ、ご紹介 感謝です!」聖幸さん!メルマガ読みました。こちらこそご紹介、ありがとうございます。(Trackbackうちそこねてたので、のちほど追加しときます)検索してみておもいましたが、マズローの『完全なる経営』についてはWeb上の解説文書が意外と少ないんですよ。どう批評していいかよくわからんってことなんでしょうね。僕も少しずつ学んでいこうと思います。追伸: 先週、谷沢永一さんの『人間通になる読書術』を読んでまして、聖幸さんのところで谷沢さんの別の本の記事を読んだのは不思議なシンクロ体験でした。
3. Posted by 聖幸 2004年05月17日 02:02
「大著は感想を書きにくい?!」>こちらこそご紹介、ありがとうございます。そう言ってもらうと助かります。メルマガは修正が効かないので、緊張します>マズローの『完全なる経営』についてはWeb上の解説文書が意外と少ないんですよ。タイトルからすると、かなり売れそうなんですがね探してみると、たしかに少ないですね。デリケートな問題も取り上げているからでしょうか?ただ、大著とか名著は生半可な知識では、実際書きにくい面はありますね。> 先週、谷沢永一さんの『人間通になる読書術』を読んでまして、>聖幸さんのところで谷沢さんの別の本の記事を読んだのは不思議なシンクロ体験でした。 謎の現象ですよね。ただ、本の好みは人それぞれと言っても、結構似てますからね。しかし谷沢永一さんは偶然ですね。私は1冊しか持ってないです。「人間通の読書術」も読んでみますね。